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ビデオカメラ三脚

今回はビデオ三脚について書いてみたいと思います。

三脚にはカメラ用とビデオカメラ用に大きく分かれています。
一番は何が違うかとなりますが、ヘッドの駆動方式です。

写真用のカメラは静止に特化した構造になりますが、ビデオカメラ用は連続した動きに対応した構造になっています。

ビデオカメラ用のヘッドの駆動方式は2つに分かれています。
オイルフリュード方式とギヤ駆動方式になります。

大体のヘッドがオイルフリュード方式になっていますが、近年ギヤ方式を採用しているヘッドも出始めております。
どちらにもメリットデメリットがあり最終的には好みの選択となっています。

■オイルフリュードタイプ
文字通りオイルの粘りを利用した駆動方式になります。
オイルならではのねっとりとした操作性が動きをソフトにしてくれます。
このオイルはグリスのように可動部に塗られているタイプとオイルが注入されているタイプがあります。

オイル注入タイプではダイヤルにより粘りの加減を変化させることができます。
すばやいパン操作の場合は軽くしたり、じっくりパンをする場合は重くしたり。
ダイヤルも連続式になっており、かなりアナログな感覚で微調整ができるようになっています。

デメリットは温度変化とオイル漏れです。
オイルといっても、かなり粘り気のある工業用のオイルで、これが気温により粘り気が変わるのです。
空調が整っている室内では変化しにくいのですが、野外や真夏、冬などでは粘りの感覚が変わります。

夏はオイルがなめらかになりすぎてしまい、冬はオイルが硬くなります。
その為、注入タイプでは温度や季節により粘りの調整が必要となります。

またオイル方式は経年劣化により、オイルが漏れないようにシールがされていパーツが劣化してシール隙間からオイルが漏れてくるのです。
オイルが漏れるとオイルを再注入して新しいシールキャップに交換という事になります。
もしそのままで使っていると、特に夏場ですと劣化したシール部からオイルがだらだらと垂れてきます。

粘り気のあるオイルなのでオイルがすぐには抜け落ちることはないのですが、手や服に着くとこれがなかなか厄介なのです。
その漏れたオイルが三脚ケースに付着するとヘッドが油まみれになっていたり。
手もべったべたで石鹸でもなかなか綺麗に落ちてくれません。

オイルも抜け落ちるので粘り気の精度も悪くなってきます。
ジャンク品のオイルフリュードヘッドを使うとスッカスカな操作性になってしまいます。
個人で分解してオイルを再注入する場合でも交換するシール部品がないと完全メンテナンスができないなど、最後はメーカーメンテが必要になります。

古いヘッドになるとメーカーメンテではなく、メンテ専門店に依頼することになりますが、ヴィンテンなどの放送・業務クラスのヘッドになるとオイル注入、シール交換だけで15万以上かかってきます。

またオイル漏れは劣化以外にも、ヘッドに衝撃を与えてしまった場合にもシールが外れてオイル漏れとなる場合もあります。
ヴィンテンの放送・業務クラスのヘッドはそれなりに丈夫にはできているのですが、オイル漏れを考えると丁寧に扱う事が重要です。
ただ、オイルのメンテさえ克服できれば長く使用できるヘッドとも言えます。

■ギヤ方式タイプ
ギヤ方式を採用しているメーカーは昔はザハトラーしかありませんでしたが、近年ギヤ方式を採用したヘッドが特に中国メーカーから出ています。
といってもほとんどがザハトラーのパクリヘッドになっています。
構造だけじゃなく見た目もかなりそっくりです。ヘッドだけじゃなくザハトラーが開発したスピードロックという足のロック機構まで。

ギヤ方式は文字通り、ギヤの組み合わせにより粘りを再現しています。
自転車のギヤを想像してもらえると分かるかもしれませんが、ギヤの組み合わせにより軽くしたり重くしたりを変化させることができます。

ですのでオイルフリュードのようなオイル漏れもありませんし、寒冷地などに行ってもオイルが固まって重くなるなんてこともなく、温度変化に左右されない構造になっています。

そんなこともあり放送業界ではスタジオや温度変化の少ない気候ではオイルフリュードのヴィンテン。
寒冷地などの温度変化が激しい所ではギヤのザハトラーと分かれています。

日本では温度変化が安定しているのでヴィンテンが多くみられたのですが、最近はザハトラーの方が目立つようにはなってきました。
おそらくメンテの事も考えるとオイル漏れ費用を考えるとザハトラーになってくるのではないでしょうか。

またヴィンテン三脚の買い替え時期になり、その際にザハトラーに移行している所が増えていたり、ハンディーカメラの活用も多くなり、そういった意味合いでもザハトラーが採用されているのかもしれませんね。
リーベックも同様に業務クラスとしてのリーベックでしたが、放送業界でもハンディー用の三脚としてリーベックが多くみられます。

今はザハトラーもヴィンテンもメーカーが統合されました。
例えるなら統合当時はトヨタとホンダが統合するくらいの驚きでしたが^^

ギヤ方式にもデメリットは存在します。
それが衝撃耐性です。
ギヤ方式なのでヘッドに落下などの衝撃が加わるとギヤが外れたり、ギヤが割れたりすることがあります。
こうなるともうヘッドとしての役割がまったく果たさなくなるのです。

その危険性を少しでも解消するための方法というか使用終了後の儀式があります。

まずパン、チルトギヤのダイヤルを0にします。
次にカウンターバランスのノブを最大の設定値にします。

この状態で保管すると衝撃に対する故障率が軽減します。

ですが、ついついこの儀式を忘れたり、忙しい移動時はおろそかにしてしまいます。
そんな時に限って起こる事故もあるのですが、癖をつけるしかないですかね。
といいつつ、たまにヘッドのロックネジもかけ忘れてカメラを取り外してヘッドが動くなんて事もやりがちですよね^^;

オイルヘッドの場合はそんな儀式をする必要もなかったり。

あとは調整がギヤ方式なので特定の数値ダイヤルにしかできません。
オイルフリュードのように、連続した調整の中から設定ではなく、特定の数値から選択する事になります。

高価なヘッドになると、この設定値が多くなるのですが、そんな点からもオイルフリュードヘッドを好む人も多いのではないでしょうか。
オイルフリュードよりも多少大味な設定なギヤ方式ですが、使いなれてギヤの好みも決まれば同じ精度で使い続けられるというのもギヤ方式ならではなんだと思います。

そういう事で最終的には好みとなります^^

■足
ビデオ用の三脚は足にも少し特徴があります。
写真用の足は1本の足を延ばしていくポール式でロックも回転させながら締め付けていくタイプが多いのですが、ビデオカメラ用の三脚は1カ所のパイプが
2本式になっていたり、ロック部もノブ式が多いです。

足自体はやはりヘッドを連続回転しながら撮影する事が多いので、回転中もねじれが起きにくいような構造になっています。
そのような構造のためロック機構もノブでロックする方式になっています。

回転締め付けとはちがってノブを回すだけなのでロックがかけやすい反面、デメリットもあり経年劣化でロックブレーキが緩んできます。
緩むとノブでロックしてもずるずると足が縮んでいくのです。

こうなってしまった場合はノブを外してロック調整をする自己メンテナンスが必要になります。
またロック部のノブが経年劣化や削れて緩くなったり、故障で割れてしまった場合は新しいノブパーツに交換しなければなりません。
販売終了してしまった場合、パーツが手に入らないので詰みます。

■スプレッダー
これも写真用のカメラ三脚にはあまり見られないパーツです。
スプレッダーとは足の開きを制御する構造パーツとなります。

このスプレッダーの取り付け個所は2つあります。

足の中央部につけるミッドスプレッター(中間スプレッダー)
足の最下部につけるグランドスプレッダー

どちらも足の開きを調整するパーツなのですが、搭載される部分により使い勝手が変わってくる重要なパーツです。

趣味用で使うようなビデオ三脚の場合、多く見られるのがミッドスプレッターです。
より高価な足になるとミッドスプレッターが伸縮して足の開きが調整できます。

放送業界で多く見られるのがグランドスプレッターです。
放送業界で使うカメラは今は小型のものが多いのですが、肩乗せカメラのような大型のカメラをワンオペで扱う場合も多く、そんな大きなカメラを載せた状態で三脚の高さを変えたり、とにかく現場ですぐに足を開いてカメラを載せる。
なんて時にはグランドスプレッターが重宝するのです。

グランドスプレッター自体が丈夫なので、スプレッダーを足で踏みつけて足を開いたり、足を延ばしたり。
移動時もスプレッダーを蹴り上げて折りたたんで移動したり。
またグランドスプレッターは足の高さを上げても中間スプレッターよりも小さい開きで済むのです。

中間スプレッターも伸縮を最短にすればある程度は開きを狭くはできるのですが、グランドスプレッターに比べるとかなり差出ます。
また足の開きを小さくしたとしてもバランスよく立ってくれるのがグランドスプレッターならではのポイントになります。

そして足全体がつながっているので衝撃にも強い方です。
中間スプレッダーの場合、各足の先が独立しているので最悪その1カ所がこづかれることがあります。
そうなると一気にバランスがくずれてカメラが転倒なんてこともあります。

グランドであれば、全体で衝撃を吸収するので中間仕様よりも転倒のリスクが小さいです。

とはいえグランドにもデメリットはあります。
それが接地面です。

三脚は常に平坦な場所に添えるものではありません。
自然なところで使えば地面の高さが足の場所により変わってきますよね。

山岳地帯とか。川の中とか。
そんな時はグランドスプレッダーは使えません。
そこで必要なのがミッドスプレッダーになります。

ミッドスプレッターなら各足の長さを微調整できるのです。
それゆえに写真用のカメラで使う三脚は中間スプレッダーだったり、中間スプレッダー自体がないポール式の三脚を使うのではないでしょうか。

中間スプレッダーでさえ、結果的に足の開き自体は制限がありますので、その制限さえなく設定できるのもポール式の三脚ならではですよね。

■ヘッドの選び方
オイルフリュードヘッドを購入する際に注意が必要なのが対応重量です。

小型カメラ用ヘッドで大型のカメラが載せられないのはわかりやすいのですが、大型カメラ用のヘッドには軽いカメラは搭載出来ません。
ある程度はカウンターバランスノブで調整はできるのですが、それも限度があります。

購入の際は最大荷重も重要ですが、最低荷重も重要になります。

それをも克服しているのがギヤ方式のヘッドです。
ギヤ方式も最大荷重には制限がありますが、最低荷重に関してはザハトラー三脚では下は0kgから対応なんてヘッドもあるんです。

もしある程度大きいカメラも、小さいカメラも両方対応させたい三脚が欲しいと思われる場合はザハトラーの三脚がお勧めです。
使うカメラが常に決まっている場合はオイルフリュードの方が技術的な精度は高いのでより芸術的な作品には適しています。

■ビデオ三脚メーカー
ここまでビデオ用三脚について書いてきましたが、最後にビデオ用三脚で有名なメーカーを書いて終わりにしたいと思います。

Vinten(ヴィンテン)・・・イギリスのメーカーです。テレビでよく映る白い三脚は全部ヴィンテンです。黒もあるんですよ^^

Sachtler(ザハトラー)・・・ドイツのメーカーです。ギヤ方式で温度変化に強く。他にもリグ部材や照明も扱っています。

Manfrotto(マンフロット)・・・イタリアのメーカーです。価格も精度も安定しており人気があるメーカーです。

Libec(リーベック)・・・日本のメーカーです。マンフロットの日本版的な存在で価格、制度共に安定しています。

■余談
私が初めて購入したビデオカメラ用の三脚はリーベックでした。
75mmボールのヘッドでソニーの肩乗せカメラを載せて使っていました^^
リーベックさんはズームデマンドも有名でして、今もズームデマンドはリーベックさんにお世話になっています。
もう廃盤リモコンですが、断線したら手直しして延命使用していますが断線以外の故障はありません。
耐久性も抜群です。

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