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IK Multimedias ARC Studio
今回は3月に発売したIK Multimedias社のルーム音響補正システム「ARC Studio」です。
私は以前Sonarworks社の「SoundID Reference」を購入した経緯があります。
ですが、補正した音が自分が思っていた感じとちょっと違ったため使用を控えていました。
あと測定作業にちょっと難しい部分があるという事もほぼ使用をしなかった理由にもなるのですが、
■ARC Studio
こちらの製品内容は補正ソフトの「ARC4」、測定マイク(コンデンサー)、ユニットの3構成のセットとなっています。
Sonarworksと違う点はユニットになります。
このユニットに測定したデーターが保存することができ、測定後はPCとの接続はせずに単体ユニットとして動きます。
ユニットに補正データーが蓄えられるので、DAW側にプラグインとしてARC4を読み込む必要もなく。
かつ、ユニットのオンオフボタンで補正の入り切りができるようになっています。
このプラグインではないところが非常に大きく、Sonarworksの場合、補正した音声を聞くためにはプラグインを読み込む必要があったり、マスターにプラグインさせて使うのですが、書き出しの際にプラグインをオンにしたまま書き出したりするミスもなくなります。
そして、ユニットがスピーカーと直結されているため、DAWを起動しなくてもitunes等他のソフトでも補正した音声を再生する事ができます。
■SoundID
こちらの製品内容は補正ソフトの「SoundID Reference」と測定マイクのセットとなっております。
プラグインとして機能するので、補正音声を適用させる場合はマスタートラックに読み込み使用します。
注意点は上の項目でも書いた通り、書き出し時にプラグインをオフにする必要があります。
でないと、補正データーが適用された音声が書き出されることになります。
ARC Studioには無いメリットとしては、モニタースピーカーだけではなく、あらかじめSonarworks社が測定した
各社の代表的なモニターヘッドホンの補正データが収録されている点です。
これによりヘッドホンも補正された音声で作業ができる点です。
以上のことから、どちらも必要な場面が出てくるので両方あってもよいのかなぁとも思うのですが、どちらか1つを選べと言われたら迷うことなくARC Studioをお勧めします。
■補正データー測定方法
どちらも付属の補正ソフトにて付属マイクによる測定をしていきます。
測定の前段階ではマイクの感度調節を行います。
マイクに測定音が入るように適正な音量調整をしていきます。
マイクの感度が小さいとモニタースピーカーの音量を上げなくてはなりません。
測定音はかなり大きな音がするため、マイクのゲインで音が割れない程度までゲインを上げておき、その後にモニタースピーカーの音量を決めていくと必要最低限の音量で調整ができます。
調整中はもちろん部屋の中は静かにしておきましょう。
測定ポイントはARC Stuidoが21ポイントですが、簡易モードですと7ポイントで測定する事ができます。
21ポイントとの違いは7カ所の測定位置を高さ別に3段階測定することで7×3高さで21ポイントとなります。
各ポイントの測定時間は10秒程度と短いので時間があれば21ポイントで行なってもよいのですが、7ポイントでも十分な計測はできました。
SoundIDは40ヶ所の測定が必要となり、ARCよりも緻密な測定ポイントになります。
面白いのがマイクの位置がソフト側で把握できてるところです。
測定ポイントが沢山あっても、その場所までマイクを動かしながら位置決めができる点は賢いと思いました。
どちらも測定後に補正結果が表示され、出過ぎた低音や高音をフラットにしてくれるようなイコライジングがされます。
また低音測定も行われます。
低音測定自体は優秀なんだと思いますが、これがまた結構な音がします。
私は自宅スタジオなのですが、特に防音設計もされていないので外にもかなり測定音が漏れる訳で。
低音の測定は家がきしむくらいの低音がなるのですが、モニタースピーカーの穴からは風がびゅうびゅうでるくらいの音で焦りました。
また通常の測定音もARCは夜間でも行えるくらいの音量でも調整ができましたが、SoundIDはとにかく測定時の音が気になり、怖くてもう測定したくありませんでした。
また何故か測定がNGになることが多く、対してARCはすんなり終わるので定期的な再調整も苦にならないかと思います。
■測定結果の違い
測定結果は両者ともに大体同じ補正がされていました。
ですが出音に違いがありました。
この違いで私はARCを買ってよかったと思ったわけなのですが、SoundIDの出音は結構ハイ上がりな感じ。
たとえるなら900STのようなフラットであり高音気味な感じになります。
ですのでシャリシャリした感じがありました。
私はフルオーケストラなどの生楽器をメインに扱うので、このシャリシャリな感じが非常に使いづらかったのです。
大してARCはシャリシャリした感じもなく、純粋なフラットな特性がある感じがしました。
また芯もしっかりしているのでソフトウェア的な音というより、ハードウェア的な安定した出音になったため、これは使えると思ったわけです。
SoundIDはモニタースピーカーの味をもすべて消し去りフラットを目指す方向が、ARCはモニタースピーカーの存在も残しつつフラットにしてくれる感じがして、とても好印象でした。
■さいごに
といった感じで補正もメーカー別に目指す方向が若干違うので、補正もメーカーの好みが入っているんだなぁとも思ったのですが、使う側の好みもありますので、できれば両者を比較して購入ができればと思うのですが難しい話でもありますよね。
SoundIDの悪い点ばかり目立つ記事にはなってしまったのですが、先にも書きました通りSoundIDにはヘッドホンの補正データーも活用できる点は非常に大きいです。
沢山のヘッドホンで聞き分けしなくても済むようにもなりますので、これもまた必要なプラグインになるかと思います。
ARCは簡易7ポイント測定ができますので、その気軽な点からも出先でも補正測定ができるかと思います。
最大5個のアカウントも付属してくるので、自宅のPC以外にも持ち運び用のPCにもインストールさせておけたり。
補正データーは名前を付けて保存しておけるので、自宅に帰ったら自宅の補正ファイルを読み込めばよかったり。
かなり使い勝手がよいのです。
測定は高さや場所を正確にするため、できればマイクスタンドを使った方がよいのですが、手で持って計測もできました。
マイクスタンドと手持ちでどのくらいの差がでるのかも、グラフでみると面白いかもしれませんね。
約5万円と高いようなどうなのかな値段ですが、これは買っておいて損はないかと思います。お勧めです。