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ポップガード
2019年も本日で幕を閉じます。
明日から2020年です。
2020年はオリンピックの年でもありますよね。
来年も変わらずの投稿を目指していきますので、末永く宜しくお願い致します。
2019年最後の部ログはボーカルレコーディングには欠かせないポップガードについてです。
ポップガードとは、ボーカルレコーディングやアフレコ現場のシーンで見かけるマイクの前に設置してある物体です。
<ポップガードの意味合い>
ポップガードを使う効果ですが主に3つの効果があります。
●ポップノイズ対策
まずひとつは、ポップガードの名前のとおりポップノイズを防ぐためです。
ポップノイズとは、人が声を発生する時に出てくる息の風です。
この息はポップノイズといって、マイクに空気がかかると声の成分の他にボコボコといった人の吐く息の音まで収録されてしまいます。
強風の時に電話するとマイクに風の音がボウボウ入ってくる。あんな感じです。
人の声は破裂音(ば、ぱ)が特に息の風が強く発生します。
そこでポップガードを使うと、マイクの手前で声だけ通して風はポップガードで受け止めるといった事ができます。
●唾よけ対策
もうひとつは、唾よけとなります。
レコーディングで使用するマイクはコンデンサー型のマイクを使用する事が多いです。
コンデンサーマイクの集音部に使用されているのはダイアフラムです。
ダイアフラムは薄い金属箔が使用されており、非常にデリケートな素材です。
金属箔は湿度に弱く、人の唾が直接かかると水気がかかる影響に加え、それが蒸発すると金属箔が酸化して損傷を受けます。
損傷を受けると、正常な状態で集音が出来なくなります。
この劣化を逆に、集音が柔らかくなって味が出てきたと言う方もおられますが、私個人としては劣化症状だと認識しております。
話は脱線してしまいますがマイクには、それぞれの基本特性があり、これは同じモデルでも個々に差は出来てしまうのですが、ある程度の値段が高いマイクになると検出結果の表が付属してくる場合があります。
これはどの周波数をどこまで集音できているという計測結果のグラフなのですが、ダイアフラムやその他のコンデンサー等のパーツの劣化、使用環境で集音が悪くなっていきます。
自然劣化なので仕方ないのですが、人為的な劣化よりは滑らかに下がっていく程度になります。
ですが、人間の唾液はダイアフラムにとってかなりのダメージがありますので、できる限り避けたい。
そこで少しでもそれを防ぐ意味がポップガードにはあります。
ちなみにですが、ダイアフラムには埃も付着します。
ダイアフラムは非常に繊細な部品ですので簡単に掃除することもできませんし、清掃とはダイアフラムを擦る作業にもなりますのでとても危険な作業になります。
たまにコンデンサーマイクをポップガード無しで使っている収録風景がありますが、あれは捨てマイクを使ったイメージ撮影用です。
マイクは劣化機材になりますが、大手のスタジオでは古いマイクは修理やメンテナンスに出さずに新しいマイクを購入します。
その古いマイクをイメージ用にまわしているのです。
もちろん、ただ単にずさんに扱われているのでポップガード無しで使う現場もあるようですが、これはどうしようもないパターンです。
またアフレコのような1本のマイクを複数人で共有する収録でもやむ終えなくガードが設置できない場合もあるようです。
●距離対策
ボーカルレコーディングでとても重要なのがマイクと人との間隔です。
人間ですので、わずかな時間であってもマイクとの距離を一定に保つことは困難です。
特に長時間にわたるボーカルレコーディングでは、マイクとの距離を常に意識することは不可能です。
ボーカルの人たちにとって一番重要なのはリラックスです。
マイクの距離を常に意識しながらってのはとてもストレスになるでしょう。
そこでポップガードを使って強制的に距離を安定させる方法です。
具体的な距離については、その人の声や息の特性により変わってくるので一概には言えない部分ではあります。
あまり近いと、いくらポップガードがあっても完全にポップノイズを防ぐ事はできませんし、湿気対策としてもある程度の間隔が必要となります。
(ウィスパーボイスなどの特殊な発生は除いて)
大体、人が歌う時は体を大きく揺らしたくなったり、リラックスしたくなるのでマイクとの距離も離れそうになります。
逆に急激に接近してしまう場合もあります。
そのボーカルの方の特性?によってポップガードを挟む距離を割り出していきましょう。
ボーカルにとってはポップガードが距離の目安となってくれるため、うまい距離が割り出せれば長時間のレコーディングでも安定した距離を作ることが出来ると思います。
<ポップガードの種類>
ポップガードには現在2つの種類が存在します。
種類とは膜の部分になります。
布製と金属で分かれるのですが、昔はポップガードといえば布製しかありませんでした。
布製の場合、かなり細かい繊維になりますので唾よけの効果が大きいです。
ただ、長時間になると次第に繊維部分が湿って集音特性が変化してしまう心配もありますが、それよりもポップガードを挟みこむ事によっての集音特性が変わるのです。
繊維は音を吸音してしまう要素があります。
いくら薄い繊維といっても、マイクの前に膜があればガード無しの集音とは差が出てしまうのは避けられません。
そこで近年目立っているのが金属製のポップガードです。
金属なので繊維のような吸音がないため、比較的ガードがない純粋な集音に近くなります。
また金属なので丸洗いも簡単ですしガード自体の劣化対策にもなっています。
布製のガードはストッキングに使われるような素材になります。
ぴんと張った状態で枠に固定されているのですが、長年使うとヨレヨレになってきます。
また定期的に洗浄していくと、それも劣化の要因につながります。
金属製はこの劣化を考えなくて済むことになります。
とはいえ金属性も管理が悪いと錆びてしまい、これが逆に集音に影響を与えたり、最悪マイクにサビが飛ぶなんて事もあるかもしれませんので、定期的にチェックはしましょう。
昔は今のようにポップガードのメーカーや種類が豊富にはなかったので、ワイヤーハンガーとストッキングでDIYしている方もいました。
あの有名な曲「We Are The World」の収録様子のビデオでも、ワイヤーとストッキングで作った手作りポップガードを使っている場面も見れたり。
色がもろ人肌色のストッキングを使っているので当時はなんとも思ってなかったのですが、今見ると超大型アーティストがなんとも切なく感じる部分でもありますか^^
といったように、ポップガードの重要性が分かって頂けましたら幸いです。
見た目がかっこいい。それで導入した。それでもいいのです。ポップガードは機材と作業効率を安定に導くありがたーい機材さんであります。